
このレッスンでは、
「ひとりごと」や「ぬいぐるみとのおしゃべり」など、
この時期の子どもに見られる特有の行動について、
発達から考えられるその理由を学習しましょう。
ひとりごと
子どもが成長するにつれ、
あそびの最中に何やら1人でぶつぶつと言い、
「この子は1人でしゃべっていて大丈夫かしら」
と養育者が心配することがあります。
しかし、これも発達の過程の1つ。
ひとりごとは、子どもが3歳ごろからよくするようになり、
7歳ごろに向かってだんだんと減りはじめます。
ロシアの心理学者ヴィゴツキーは、
言葉には他者とのコミュニケーション手段としての言葉である「外言(がいげん)」と、
自分の頭の中で考え事をする時に使う言葉である「内言(ないげん)」の、
2つに分類できると考えました。
子どものひとりごとは、
他者も聞くことができるので「外言」でありながら、
自分ひとりで話しているので「内言」の機能ももつと理解できます。
ヴィゴツキーの実験によれば、
子どもは困ることがあるとひとりごとが増えることがわかっています。
成長するにつれ、
頭の中だけで自分の気持ちをまとめられるようになり、
ひとりごとが減っていくと考えられています。
前操作期
幼児期の子どもの思考は、
大人からは不思議に思うことが少なくありません。
「どうして自分のことしか考えられないのか」
「どうしてぬいぐるみとおしゃべるするのか」
こんなことに疑問を抱く養育者も少なくないでしょう。
子どものこうした思考について、
ピアジェの発達段階を使って理解してみましょう。
心理学者のピアジェが唱えた発達段階の分類では、
2歳〜7歳ごろまでの時期を「前操作期」としています。
前操作期は、さらに次の2つに段階に分かれます。
①前概念的思考段階 2歳〜4歳ごろまで
| 表象能力の発達 | 目の前に見えないものを思い浮かべることができる能力(イメージ力)が発達する。 |
| 象徴機能の発達 | 目の前にないものを他のものに置き換えることができるようになる。 例えば、ものを言葉に置き換えられるようになるので、言葉をたくさん覚える。 また、おもちゃを電話に見立てる「見立てあそび」や「ままごと」もできるようになる。 |
②直感的思考段階 4歳〜7歳ごろまで
| 概念の獲得 | ものごとの分類、関連づけができるようになる。 |
| 保存概念は不十分 | 「保存概念」とは、ものの見た目が変わっても量や数は変化しないこと。 これが不十分ということは、例えば同じ量のジュースを背の高いコップと背の低いコップに入れると、背の高いコップにたくさん入っていると考えてしまう。つまり、見た目に影響されてしまう。 |
「前操作期」全体で見られる特徴
アニミズム思考
アニミズム思考とは、
生物ではないものにも心や命があると考えることです。
子どもが、ぬいぐるみがまるで生きているかのように、
話しかけたり遊んだりするのはこのため。
お絵描きで、花や車、太陽に目や口を描くのも、
アニミズムの表れによるものです。
自己中心性が強い
この時期の子どもは、他者の視点で見たり、考えたりができません。
自分が見ているもの、考えていることを、
他者も見て、考えていると思っているので、
客観的にものごとを見ることはまだ難しいのです。
これは、自分の利益のためにしている行動ではないので、
いわゆる「わがまま」とは異なります。
自己認知
赤ちゃんは、最初は鏡に映る自分を見ても、
それが自分だと知りません。
鏡に映る自分を見ても自分だと知らないので、
鏡を触ろうとしたり、のぞきこんだりします。
それが自分だとわかるようになるのは、
1歳半ごろのこと。
このころになると、鏡に映っている自分を見て、
自分の顔に触ったりする行動が見られ、
鏡の自分を「自分」と認識できるようになったことがわかります。
このような赤ちゃんの発達は、他者との関わりの中で起こります。
鏡に映る自分を認知する前に、
養育者が映る鏡を見て、それが養育者だとわかるようになるのです。
赤ちゃんは、養育者など他者と関わっていく中で、
他者と自分の違いを認識するようになり、
それが自己意識(※)にもつながっていきます。
※自己意識については、次のレッスンで学習します。

