
このレッスンも、引き続き幼児期に見られる感情の発達について
学習を進めていきます。
感情のコントロール
自分の感情を制御して適切に表現すること、
そして他者の感情も理解すること。
このような感情のコントロールは、
社会で生きていくために必要なスキルです。
感情の取り扱いを「スキル」としてとらえ、
能動的に学ぶという考え方が注目されていますが、
感情のスキルを「感情コンピテンス」と言います。
主な感情コンピテンスには次の3つがあります。
| 感情理解 | 自分と他者の感情に気がつき、理解し、共感できる能力。 自分の感情と他者の感情は違うと理解できること。 |
| 感情表出 | 自分の感情を、適切な方法で表現できる能力。 |
| 感情制御 | 周囲の状況に合わせて自分の感情をコントロールできる能力。 |
子どもに感情表現を授ける
この時期の子どもはまだ自分の感情をコントロールしたり、
適切に表現することが難しいです。
そのため、周囲の大人が子どもに共感的に対応し、
その感情を表現する言葉や方法を教える必要があります。
例えば、
【子どもとどこかに遊びにいく時】
→「楽しみだね!」「わくわくするね!」
【友だちとバイバイする時間になり、さびしそうな時】
→「もっと遊びたかったね」「バイバイするの寂しいね」
【子どもがプレゼントを開ける時」
→「何だろうね?ドキドキするね!」

また、「寂しい」「残念」「悔しい」などの感情があるときは、
それに共感するとともに、
一緒に解決策を考えてあげると、
子どもは上手に気持ちを消化できるようになります。
例えば、
【公園に行ったけど、友だちがいなかった時】
→「残念だったね。がっかりしたね」
解決策「今度は違う時間に来てみようか」
「幼稚園で遊ぶ約束をしてから来るのはどう?」
このように感情コンピテンスは、
人との関わりの中で育まれていきます。
子どもが感情を上手に表現し、感情と折り合いがつけられるよう、
養育者が生活の中で適切にサポートしてあげましょう。
自己抑制
この時期の子どもは「自己主張」と「自己抑制」が発達しますが、
それぞれ発達の”時期”と”速度”が異なります。
「自己主張」は、”2歳”ごろから”急激”に発達し、強く現れます。
これが前回のレッスンですでに学んだ「イヤイヤ期」のスタートです。
その後、語彙が増えるにつれ自分の気持ちを言葉で表現できるようになると、
状況を見て「がまん」することをゆっくりと学んでいきます。
例えば、
- おもちゃをゆずる。
- 順番を待つ。
- 欲しいものがあってもがまんする。
ことができるようになります。
これが「自己抑制」ですが、
自己抑制は”3歳〜6歳ごろ”に”徐々に”発達していきます。
幼稚園や保育園で友だちと過ごし、
一定のルールがあることを理解する中で、
「がまん」したり相手に配慮することを学んでいくのです。
自己主張と自己抑制のバランス

自己抑制が発達すると、自分の感情を抑え、
相手に配慮した行動が取れるようになります。
しかし、大人が子どもの自己主張を無理やり抑えこみ、
がまんさせていつも他の子に譲らせるのは、
健全ではありません。
大人の言いなりにさせると、
子どもは自分の気持ちが表現できなくなったり、
逆に言うことを聞かなくなったりすることもあります。
「自己主張」と「自己抑制」は、
両方とも大切な発達であり、バランスが重要です。
たとえ子どもの主張を通してあげられない時でも、
「そうだったんだね」
「もっと遊びたかったよね」
と、子どもの気持ちに共感してあげることで、
子どもは「自分の気持ちをわかってくれているんだな」
と安心することができます。
自分の気持ちを大事にしてもらえる子は、
他者の気持ちも尊重できるようになります。
養育者は自己主張も自己抑制も、
バランスよく育むサポートをしてあげましょう。
感情のコントロールはスキルであること、
そして幼児期の子どもはまだそれを使いこなすのは難しい時期であることが
わかりましたね。
周囲の大人が温かい気持ちでサポートし、
子どもが上手に感情のコントロールができるように促してあげましょう。
次のレッスンも引き続き、
幼児期の発達について学習を進めます。

