
このレッスンでは、幼児期の発達のうち、
他者を理解する「心の理論」や「性別の意識」などについて解説していきます。
心の理論
「相手がなぜそのような行動を取ったのか」
「きっとこのように思ったからだろう」
このように、相手の行動や仕草から、
相手の気持ちを推測して理解できることを、
「心の理論」と言います。
しかし、幼児期の子どもは、
まだ他者の気持ちを推測することが難しいものです。
相手の気持ちを推測し、理解しようとする能力の獲得は、
4歳ごろからになります。
次の「サリー・アン課題(※)」を見てみましょう。
- 部屋に、サリーとアンがいます。
サリーはかご、アンは箱を持っています。 - サリーが、ボールをかごの中に入れて、
散歩に行きました。 - アンがかごの中のボールを、箱に入れました。
- サリーが戻ってきて、「ボールで遊ぶ」と言いました。
質問:サリーはどこを探しますか?
この問いに、3歳までの子どもは「箱」と答える子がほとんどです。
これは、自分はアンがボールをかごから箱に移したことを知っているが、
サリーが知らないことを理解できないためです。
自分が知っていることと、相手が知っていることには違いがあることが、
まだわからないのです。
これが4歳以降になると、「かご」と答えられる子が増えていきます。
※サリー・アン課題は、心の理論の発達を測るための心理検査です。
心の理論とウソ
ウソをつくには、相手の考えを推測する能力と、
相手の気持ちを自分が意図する方向へ向けさせる能力が必要です。
つまり、上手にウソをつくためには、
心の理論を獲得しなければなりません。
そのため、3歳ぐらいまではまだウソがつけず、
上手にウソがつけるようになるのは5歳以上くらいからとなります。
なお、3歳ぐらいまでに見られる「ウソ」は、
記憶の未発達や、
自分を守るためのとっさの言動や言い間違いによるものです。
大人から見ると「ウソ」に思えますが、
意図的ではないことがほとんどです。
性別の意識

子どもはいつごろから性を理解しはじめるのでしょうか。
次の表を確認してみましょう。
| ①性の同一性 | 子どもは3歳ごろになると、 男女の区別を理解するようになり、 自分も「男」または「女」であると認識する。(自分は女の子だ) |
| ②性の安定性 | その後、大人になっても性は変わらないことを理解する。(大きくなっても私は女の子) |
| ③性の一貫性 | 5歳ごろには、服装や行動を変えても、性はそのままであることを理解する。(ズボンを履いても私は女の子のままだ) |
一方で、「女らしさ」や「男らしさ」は、
周囲の環境に影響を受けます。
例えば、
「女の子だからピンク」
「男の子だから青」
「料理はお母さんがするもの」
「車の運転はお父さんがするもの」
など、周囲の大人が無意識のうちに子どもに
ステレオタイプを植えつけてしまっていることが多いのです。
最近では、こうしたステレオタイプにとらわれず、
もっと自分らしさを大切にして、
自由に行動ができるようにすることを目指す
「ジェンダーフリー」の考え方が広まりつつあります。
周囲の大人も、自分にステレオタイプがあることに気づき、
子どもの「らしさ」を尊重してあげる姿勢が求められます。
トイレトレーニング

子どもが2,3歳ごろになると、
トイレトレーニングを気にする養育者が増えてきます。
一般的には、トイレトレーニングは3歳ごろまでに完了することが多いと言われています。
しかし、できるようになるまでには個人差や男女差があります。
男児は女児よりも、トイレトレーニングに時間がかかる傾向があるようです。
トイレトレーニングが完了しても、
遊びに熱中したり、楽しいことをしていたりすると、
おもらしをしてしまうことは多々あります。
また、きょうだいの誕生など環境の変化があると、
できていた子も退行してできなくなることがあります。
いずれにせよ、いつかは失敗せずにできる日が来るので、
あまりプレッシャーをかけずに、受け止めてあげる姿勢が必要です。
※医学的な理由でおもらしをしてしまっている場合もあるので、
その時には小児科を受診しましょう。
ここまで5回にわたって幼児期の発達について学習してきました。
幼児期はかわいい時期ではあるものの、
養育者を悩ませたり、
大人が理解できないような行動を取ることも多い時期です。
発達の段階を知ることで、
子どもの行動を予測したり、理解するのに役立てましょう。
次のレッスンからは、児童期の発達について解説します。

