Lesson2-16 青年期③

自己中心性

幼児期に見られた「自己中心性」とはまた異なる「自己中心性」が、
青年期にも見られます。

それが自意識の過剰です。

これは他者の気持ちを推測したり、
人の立場になって考えたりできるようになったからこそ現れる発達です。

自意識の過剰には次のような概念があります。

想像上の群衆(※)

これは自分が周囲から見られていると、
過剰に感じてしまうことです。

自分が自分に対して感じていることは、
周囲の人も自分に対して同じように感じていると思ってしまいます。

例えば、「自分の足が太い」と気にしている子は、
周囲にもそう思われていると思い込み、悩みます。

服装への関心が強まったり、
鏡の前で長い時間、自分をじっと見つめるのも、
この概念に関連して起こると考えられます。

※「想像上の観衆」「想像上の聴衆」とも言います。

個人的寓話(ぐうわ)

青年期では、自分は多くの人にとって重要な存在だと信じています。

それゆえに、自分の感情や関心ごとは、
非常に特殊であると思い込んでしまいます。

悩み事があれば、自分は世界で一番不幸であるかのように思い、
失恋をすれば、どうして自分だけがこんなに苦しい思いをするのかと悩み、
感情が過剰化します。


これらの概念に関連して現れる青年期の苦悩や葛藤も、
さまざまな人と関わり経験を重ねるにつれ、
誰もがこうしたことに悩んでいると気づき、
やがては収束していきます。

自己概念の変化

自己概念とは、
自分自身について自分が持っているイメージや考え方のことです。

例えば、

「私は真面目な性格です」
「私は女(男)です」

と言うのが自己概念になります。

この自己概念は、
成長とともに変化が見られます。

10歳ごろの子どもが自己概念を表す時は、
体の特徴(背が高い、髪が短い)や、
自分の持ち物(スカートをたくさん持っている、おもちゃを持っている)など、
具体的なものを表現することが多いです。

12歳以降になると、
対人関係(誰々と仲良し、友達がたくさんいる)といった
自己概念も表現するようになります。

16歳以降では、
自分の性格(明るい、内向的)や、
自分の役割(〜になりたい、〜で働きたい)などと
自分を表現するようになり、
自分の内面に意識が向いていることがわかります。

このことから、自己概念は

  • 具体的→抽象的
  • 外面的→内面的

と変化していくことがわかります。

上述した通り、青年期には、
自分の内面に意識が向き、抽象的な自己概念を持てるようになります。

自分を見つめるようになることで、
将来のことや、自分の役割について深く考えるようになり、
自分についての自分なりの考えを持つようになっていくのです。

青年期のアイディンティティ

青年期は学校選びや就職、留学など、
さまざまなことを自分で選択し、決断する場面と対峙します。

「自分とは何か」と思い悩み、模索していく中で、
アイデンティティは確立していきます。

児童期までは、さまざまな経験をしていく中で、
複数の自分を見つけます。

  • 明るい自分と、内向的な自分
  • 親が好きな自分と、嫌いな自分
  • 真面目な自分と、怠け者の自分・・・

というように。

ドイツ出身の発達心理学者であるエリクソンは、
こうして見つけた複数の自己を青年期に統合し、
アイデンティティを構築していくと考えました。

このエリクソンのアイデンティティの概念を、
さらに発展させたのがマーシャです。

マーシャは、アイデンティティについて次のように
4つのステイタスに分類しました。

達成(アイデンティティ確立)危機あり
積極的関与あり
危機を経験し、それに積極的に関与して考えた結果、物事を解決し、アイデンティティを確立した状態。
早期完了危機なし
積極的関与あり
自分と親の目標の不協和がなく、危機も経験していない。親に期待される生き方を受け入れ、積極的に関与している状態。しかし、受け入れた価値観が通用しないと混乱し、融通がきかない。
モラトリアム危機最中
積極的関与しようとしている
これまでの自分に迷いが生じ、どうなりたいか模索している状態。
拡散危機なし
積極的関与していない

危機あり
積極的関与していない
危機の経験がなく、積極的に関与もしていないため、自分自身を見失っている状態。

危機は経験したが、何でもできるという楽観的な状態のため、積極的に関与もしていない。

※表中の「危機」「積極的関与」については、
以下の解説を確認してください。

危機

迷いや葛藤を経験したかどうか。

「自分は何者であるか」「自分は何をしたいのか」と自分を見つめ直し、
自分の生き方を考えること。

積極的関与

目標に積極的に関わったかどうか。

何かしらの行動や努力をしたか。


危機を経験し、それに積極的に関与すれば、
アイデンティティは確立されやすくなります。

大学生ぐらいになると、
上記の4つのタイプに分かれていきますが、
アイデンティティの確立には個人差があります。


これで胎児期〜青年期までの発達の解説が一通り終わりました。

これまで子育てで悩んでいたことが、

「そういうことだったのか」

と納得できた点もあったのではないでしょうか。

今はまだ小さい子どもがいる人も、
これから迎える発達について理解が深まったことと思います。