Lesson2-5 乳児期③

このレッスンでは、赤ちゃんと他者の関わり方の変化や、
子どもの気質について学習します。

二項関係から三項関係へ

赤ちゃんは、生まれてからまず、
「自分と母親」「自分とおもちゃ」などのように、
1対1の関係を育んていきます。

この、自分と人、自分とモノの、二者で成り立つ関係を
「二項関係」と言います。

その後、9カ月ごろになると、
二者の関係から三者の関係に世界が広がりますが、
これを「三項関係」と言います。

三項関係になると、赤ちゃんは自分が興味あるものを
周囲の人に知らせます。

すると周囲の人がそのモノについて話したり、
名前を教えたりすることで、
子どもは世界を知っていくことができます。

三項関係の成立により、
コミュニケーションの発達を促したり、
社会性の基礎ができることもあり、
この時期の変化を「9カ月革命」と呼ぶこともあります。

指差しと共同注意

三項関係を表すわかりやすい行動としては、
子どもと養育者が同じモノに注意・関心を向けることがあります。

これを「共同注意」と言います。

具体的には、子どもが興味あるモノを指差して養育者に知らせ、
養育者にそのモノに注意を向けさせ、
分かち合おうとする行動です。

例えば子どもが公園にいる鳩を指差したら、
「あれは鳩だね」と答えてあげたり、

高いところにしまってあるおもちゃを指差ししたら、
「おもちゃで遊びたいの?今取ってあげるね」

と対応してあげますよね。

このようなやり取りの中で、子どもは語彙力を伸ばしていきます。

気質

新生児の赤ちゃんであっても、
よく泣く子もいれば、おとなしい子もいて、
個性はさまざまです。

アメリカの精神学者であるトマスとチェスは、
子どもの9つの行動を観察・分析して、
3つの気質に分類しました。

9つの行動

1.活動水準身体運動の活発さの度合い。
活発に動いている時間とそうでない時間の比率。
2.接近/回避新しい状況、刺激に対して、積極的に近づこうとするか、回避しようとするか。
3.周期性睡眠、食事、排泄などの、
生物学的本能に基づく行動の規則正しさ。
4.順応性新しい状況や環境への順応性の度合い。
5.反応の強さ刺激に対する「笑う」「泣く」などの反応の強度。
6.反応の閾値(いきち)視覚や聴覚などの五感がどれぐらい敏感か。
7.気分の質物事に対する快・不快などの気分の反応の度合い。
8.気の散りやすさ外的な刺激を受けた時の反応や、集中力の度合い。
9.注意の幅と持続性特定の物事に携わる時間の長さ。
妨害された時の執着の度合い。

3タイプの気質

扱いやすい(育てやすい)子ども・食事や睡眠、排泄が規則的で予測しやすい。
・機嫌が良い時間が長い。
・人懐っこく、環境の変化にも柔軟。
約40%の乳児がこのタイプ。
扱いにくい(育てにくい)子ども・食事や睡眠、排泄が不規則。
・不機嫌になりやすく、落ち着きがない。
・環境の変化を嫌がる。
約10%の乳児がこのタイプ。
慣れるのに時間がかかる子ども・環境の変化に対応するのに時間がかかる。
・新しいことには、繰り返して経験することで徐々に慣れるようになる。
・活動水準が低く、行動を開始するまでに時間がかかる。
約15%の乳児がこのタイプ。
その他(上記の3つに分類できない)分類できないタイプも35%いる。

トマスとチェスのこの研究により、
子どもの気質は生まれつきによるものだと考えられるようになり、
「必ずしも養育者の育て方が子どもの気質に影響を及ぼすものではない」

という考え方が広まりました。

扱いにくい子どもの親はストレスを感じやすくなりがちですが、
子どもの気質を無理に変えようとせず、
その子の気質を理解し、
長い目で成長を見守ろうとする関わりや態度が大切になります。

乳児期のころの気質は大きく変化することはないと言われていますが、
それがそのまま成長してその子の性格になるわけではなりません。

気質はその子の性格形成のベースにはなりますが、
性格は環境や周囲の人との関わりで育まれていきます。


3回にわたって乳児期の発達を学習しました。

赤ちゃんの身体の発達やコミュニケーション、
他者との関係の変化について、よく理解できたのではないでしょうか。

次のレッスンからは、幼児期の発達について学習していきます。