
気持ちや感情
二次の心の理論
幼児期に獲得した他者の心を推測する能力(Lesson2-11)は、
児童期になるとさらに発達し、
より複雑な状況も理解できるようになります。
一次の心の理論では、
「自分は、B君が悲しがっていると思っている」という、
他者の気持ちを推測し理解できました。
これが二次の心の理論では、
「自分は『C君は、B君が悲しがっていると思っている』と思っている」
という、他者の先まで理解できるようになります。
社会的表示規則の理解
また、児童期に入ってさまざまな人と関わる中で、
自分の感情を表現することが、
その場にどのような影響を与えるかを考えることもできるようになります。
それぞれの文化・社会には、
特定の場面ではどのような情動を表出すべきか、
するべきではないか、といったルールがあります。
これを社会的表示規則と言います。
例えば、お葬式の時には大声で笑わないというのは、
暗黙のルールですね。
児童期になると、この社会的表示規則を理解するようになります。
全く欲しいと思っていないプレゼントをもらった時、
相手をがっかりさせないように笑顔でお礼が言えるのも、
この規則を理解しているためです。
入り混じった感情の理解
人間は、一度にさまざまな感情を持ち合わせ、
それを自分で理解しています。
例えば、
「緊張するけれど、ワクワクもする」
「気持ちは嬉しいけれど、ちょっと迷惑」
「やってみたいけれど、少し不安」
といった感情です。
このような入り混じった感情が自分で理解できるのは、
実は10歳ごろからになります。
それまでの子どもも、入り混じった感情がありますが、
上手に表現することができません。
周囲の大人が、
例えば何かに挑戦しようとして緊張している子に対して、
「緊張するけれど、わくわくもするよね」
などと、気持ちを代弁してあげると、
子どもの自分の感情に対する理解が進んでいくでしょう。
道徳性

児童期は、道徳性も発達していく時期です。
心理学者のピアジェとコールバーグは、
道徳性の発達は仲間との関係の中で育まれると考えています。
このころの道徳性の発達について、
ピアジェとコールバーグの理論からそれぞれ考えてみましょう。
ピアジェの理論
| 他律的道徳性 5歳〜9歳ごろ | 大人が言ったことは絶対に正しく、守らなければいけない、という判断をする。 |
| 自律的道徳性 9歳〜10歳ごろ | その場の状況を見て、仲間との合意で決める、といった柔軟な判断をする。 |
上の表で見られる通り、
児童期前半は、「親や大人が決めたルールは絶対に守るべき」と考えています。
ルールは絶対という思いから、
忘れ物をしたりルール違反をしている友だちを、
大人に告げ口をする子も目立ちます。
児童期後半になるにつれ、
大人が決めたルールと友だちづきあいのはざまで、
悩む時期があります。
このような葛藤を重ねるうちに、
状況を把握して自分で柔軟に判断ができるようになります。
自立的道徳性を獲得すると、
ルールは人によってつくられたものであって絶対ではないこと、
そして何かを判断する時には結果を考慮する必要があることに、
気づくようになります。
コールバーグの理論
| 1.前慣習的水準 (ルールに従う前段階) | 段階1 罪と服従思考 | 罰を受けることを避け、権力者に服従し規則に従う。 |
| 段階2 道徳相対主義 | 自分に報酬をもたらすなら、規則に従う。 | |
| 2 .慣習的水準 (ルールに従う段階) | 段階3 大人的同調(良い子)志向 | 他者に喜ばれ、良い子でいようとする。 |
| 段階4 法と秩序志向 | 法や秩序を尊重して、自分の義務を果たそうとする。 | |
| 3.慣習以降の自律的、原則的水準(ルールが全てではないと理解する段階) | 段階5 社会契約、個人の権利志向 | 規則を絶対視するのではなく、社会的公平さや個人の権利に重きを置く。 |
| 段階6 普遍的倫理的基準 | 人間の尊厳、尊重に重きを置く。 |
小学校低学年では、前慣習的水準が見られます。
これは大人が決めた規則は絶対か、または、
自分が損をしなければ従う、といった段階です。
10歳ごろになると、慣習的水準が増えていきます。
この段階では、子どもは他者の視点に立って考えることができます。
他者に親切に振る舞うと同時に、
他者も自分に対して親切であってほしいと願い、
それが規則を守る判断基準となるのです。
児童期の発達について、3回にわたって解説をしてきました。
児童期に入ると、仲間とともに生活をする中で、
社会的な立場で自分を見られるようになったり、
他者の視点で考えたり行動を取れるようになることがわかりましたね。
またルールを理解し、
それに対してどのような行動を取るか、
社会で生活をするためのスキルを獲得していく段階も理解することができました。
次のレッスンからは、青年期について解説します。

